こちらは、去年の「ファミリアライフ」にて頒布いたしました「さくらたろう2」になります。うーん、ざっと読み返してみたらあちらこちらにアラが見つかってぐえー!と思わずにはいられませんが、とりあえず目についたところを少しですが直しましたのでアップしてみます……そのうち改めて直します。
むかしむかしあるところに、『さくらたろう』というこどもがいました。『真実国(とぅるーのくに)』のうら山でうまれて、ママといっしょにくらしていました。
さくらたろうは、うまれたときからそれはそれはちからがつよい――ということはなく、むしろ同じ年ごろの男の子たちの中ではいちばんよわいこでした。それもそのはず、さくらたろうは本当は女の子だったのです。ママはずっと男の子がほしかったのですが、毎回女の子がうまれるので、とうとう十六ばんめにうまれた女の子を、男の子としてそだてることにしてしまったのです。
そういうわけで、きんじょのこどもたちとすもうをとっても、いつもまけてしまうさくらたろうは、つまらなくなって、おそとにあそびにいかなくなってしまいました。それをしんぱいしたママは、
「さくらたろうちゃん、おでかけしないの?」
「さくら、おとこのこ、こ、わーいの――だから、おうちにずっといるの――」
「しょうがないわねえ――それじゃあ、きょうはママとおでかけしましょ?」
「ママと?それなら、さくら、いくの――」
そうしてさくらたろうとママは、森へとでかけていきました。そしてママは大きなまさかりで、どんどん木を切りたおして、かついでいきました。
「ママが木をかって、これが本当のままかり、なーんちゃって、ウフフ♪ちなみに、ままかりっていうのはニシン科のおさかな・サッパの別名よ☆」
「ママ、よくわからないこといってるの――あと、さくら、おさかなはほねがいっぱいいっぱいだから、にがて――」
ある日、おうちの中であそぶのにもあきてきたさくらたろうは、ひさしぶりにおそとにでることにしました。この前ママといっしょにおでかけした森にいくことにしたさくらたろう、ところが、いつのまにかまいごになってしまいました――
「ここ、どこ――ぐっすん――」
どんどん、森のおくへとはいっていくさくらたろう。するととつぜん、大きなももいろのクマが目を光らせながらでてきました。ああ、さくらたろうがたべられちゃう――?
「だれだ、おれの森をあらしているのは――うん、オマエ、よく見てみたらかわいいな。ふくそうはおとこっぽいけど――こんなかわいいこがおとこのこのはずがない!いや、ぎゃくだったかな?まあ、どっちでもいいか!」
そういいながら、クマはさっきとはちがういみで目を光らせました。ああ、さっきとはちがういみでさくらたろうがたべられちゃう――?
「う、う、う――うわあああああん!」
ついに、さくらたろうは泣きだしてしまいました。
「う、うわあどうしよう!?いないいない、ばあ――たかい、たかーい――うう、ダメだ。」
クマは、色々な方法でさくらたろうを泣きやませようとしますが、うまくいきません。クマはくまり――こまりました。
「うわああん――さくら、おうちにかえりたいの――」
「おうち――にんげんのいるところにつれていけばいいのか?てっぽうをもってるやつとか、おれもちょっとこわいけど――しょうがない、やーってやるぜ!」
そういって、クマはさくらたろうを背中にのせてのっしのっしとあるきはじめました。しばらくすると、ふたりは森をぬけました。
「ぐっすん――あっ、さくら、ここしってるの!」
「おお、それはよかったよかった――じゃあ、おれはもうかえるぜ。」
「まって、クマさん。さくら、つかれてあるけないの――おうちまで、つれていってほしいな。」
「えっ、それはちょっと――わかったわかった、おうちまでちゃんとおくってあげるから、なかないで!」
ふたたび、クマはさくらたろうをのせてあるきだしました。ところが、そこに――
「うわあああああ、クマだあああああ!!」
なんということでしょう、にんげんのこどもにみられてしまいました。
「りょうゆうかいのパパに、やっつけてもらわないと――」
「まって――このクマさんは、わ、るーいクマさんじゃないの。」
「あれ、おまえはさくらたろうじゃないか。」
「さくらのいうことならなんでもきいてくれる、いいクマさんなの。ねっ、クマさん♪」
「えっ、ちょっとまって、いつのまにそんなことに――アッハイそのとおりです、ピキー、ぼくわるいクマじゃないよ!」
「マジか、すげーなさくらたろう!オマエのこと、よわむしだっておもってたけど、みなおしたぜ!」
「えっへん、なの!」
こうして、さくらたろうはクマをしたがえるこどもとして、いちやくみんなのヒーローになりました。
それからはさくらたろうは、毎日おそとにでて、あそぶようになりました。さくらたろうが一声かけると、こどもたちやクマがいっせいにやってきます。いつのまにか、クマはにんげんせかいにすっかりなじんでいました。
「うーんと――今日は、みんなでおすもうをするの。ゆうしょうした人には、さくらとしょうぶするけんりをあげるの。」
こうして、すもう大会がはじまりました――まあとうぜんのように、クマがかちあがってきました。
「やっぱり、クマさんはつよいなー。」
「まあ、クマだもんね――おれたち、しんでいてもおかしくないからね――」
こどもたちも、すっかりクマとうちとけていました。
「クマさん、なかなかやるようになってきたの――よし、さくらがあいてになってあげるの。」
「お、おっすおっす、よろしくおねがいいたします!」
さくらたろうと、クマのとりくみ――ふたりはがっぷりよつにくみあいました。しかし、さくらたろうが投げるかまえをみせると、クマはあっさりとたおされてしまいました。
「うふふ――また、さくらのかちなの!」
「いやあ、さくらたろうさんにはかないませんわあ。」
ちなみにこのすもう大会、クマがさんかするようになってからは毎回この流れになっているようです。
「さくらたろう、少し前まではいちばんよわかったのにいきなりこんなに、つよくなるなんてすごいなー。」
「なにかが、おかしいと思うけど――そこにつっこんだらいけない気がするから、やめておこう。」
こうして、さくらたろうは今日もうら山さいきょうの地位をまもったのでした。
そうして、みんなはひがくれるまであそびました。
「そろそろ、かえろうかー。」
「ちょっと、まって――はしがなくなってるよ!」
なんということでしょう、はしがこわれてしまって、むこうぎしにわたれなくなってしまいました。これでは、おうちにかえれません。
「さくら、おうちにかえれないの?どうしよう――ぐすん――」
さくらたろうも、いまにも泣きだしそうです。
「だいじょうぶですよ、さくらたろうさん。ほら、あそこに大きな木があるでしょう?あれを私がたおして、はしのかわりにすれば――うーん、うーん、たおれない。」
クマがどんなにがんばっても、木はビクともしません。まったく、かんじんなときにやくにたたないクマです。がまんのできなくなった、さくらたろうがついに泣きだしてしまう――そのちょくぜん、さくらたろうのめに、きらりとひかるなにかがうつりました。
「これは――こさめお姉ちゃんのパンツ?さくら、しょうがくせいはさいこうだぜ!なんておもってないの――まあとにかく、もってかえってかえしてあげないと、なの。あっ、ちょっとおはながむずむずしてきたの――ちーん。」
どうしてこんなところにそんなものが、というなぞはさておき――改めて、さくらたろうはさっきみつけた、ひかるもののところにむかいました。
「これは――ママのまさかりなの!ママ、こんなところにわすれんぼさんしてるの!」
それは、さくらたろうのママがもっているまさかりでした。
「そうなの、これをつかって木を切れば!うんしょ、うんしょ――だめなの、おもすぎるの。ねえ、クマさん――きゃっ!」
さくらたろうは、この中でいちばん力のあるクマにまさかりをわたそうとしました――が、すべってころんでしまいました。
バキッ!メキメキ――ドーン!
なんと、さくらたろうがころんだひょうしにほうりなげてしまったまさかりが、みごとに木にめいちゅう!木はたおれて、みごとにむこうぎしのほうへとおちていきました。
「うわーさくらたろうが木をたおした!これでかえれるぞー!」
「あんな、大きな木を――ほんとうに力もちだったんだね、うたがってごめん。そしてありがとう、さくらたろう!」
「さくらたろうさん、すごおおおおおい!!」
みんなが、くちぐちにさくらたろうをもてはやしていきます。
「えっと、ちが――そ、そうなの、えっへん!」
こうして、さくらたろうたちはぶじにおうちにかえることができたのでした。
「……。」
そして、そんなさくらたろうたちのようすをみている人がいました。いったいなにものなのでしょうか――?
そのよる――さくらたろうがじぶんのへやにもどろうとすると、ママがあらわれました。
「さくらたろうちゃん、ヒカルちゃんがよんでいるわよ。」
ヒカルというのは、ママの四ばんめのこどもで、いまは山の下にある『木花寺子屋(このはなてらこや)』にかよっている、さくらたろうのおねえさんです。
「ヒカルおねえちゃんが?さくらに、なんのごようかな?」
とにかく、さくらたろうはヒカルのへやにいくことにしました。
「こんこん――ヒカルおねえちゃん、さくらにごようですか?」
「ああ、さくら、こんなじかんにすまないね。じつはさっき、オマエが大木を切りたおしたところをぐうぜんみていてな――
ちょっと、私とすもうをとってみてくれないか?」
「えっ、ヒカルおねえちゃんと?うーん――」
ちなみに、ヒカルはママのこどもたちの中でも、いちばんつよいことでゆうめいでした。
「ガタッ――おうおう、さくらたろうさんとやろうっていうなら、まずはこのおれとしょうぶしてもらおうか。」
森にかえらずにいったいなにをしていたのでしょうか、クマがとつぜんはいってきました。
「なんだ、オマエは――変態(へんたい)、いや変熊(へんくま)か?とにかく、くちくしてやる!」
「いぇーがー!?」
あわれ、クマはヒカルになげとばされて、いけにおちてしまいました。……しずんだまま、うかんできません。
「よし、じゃまものはいなくなったな――それじゃあ、あらためてしょうぶしようか、さくら。」
ヒカルが、じりじりとちかづき――さくらたろうをつかみました。
「ヒカルおねえちゃん、こ、わーいの――わあああああん!!」
「えっ――うわあああああ!!」
とっさに、さくらたろうはヒカルをうっちゃってしまいました。どうやらさくらたろうは、クマとすもうをなんどもとっているうちに、すもうのぎじゅつをしぜんにみにつけていたようです。
「ご、ごめんなさいヒカルおねえちゃん――だいじょうぶ、ですか?」
「いたた――あはは、みごとにやられちゃったよ。ほんとうに、つよくなったんだな――これなら、だいじょうぶか。」
「???」
「じつはさ、オマエが男としてそだてられてるのがかわいそうだから、ママにいって、やめさせてもらおうかとおもってたんだが――こんなにつよくなってるんなら、もんだいないな。これからもがんばれよ、さくらたろう!」
「えっ、そんな――まって、それならさくら、ふつうの女の子にもどりたいの!ヒカルおねえちゃあああああん!?」
こうして、さくらたろう、いえ、さくらが男の子としてすごす日々はまだつづくことになるのでした。いきわかれのちょうなんがみつかる、その日まで――
「ごぼごぼ、だれかたすけて――ていうか、どうせなら、いなづまちゃんとかいかづちちゃんみたいな子にくちくしてほしかった――」
そしてクマは、すっかりわすれられていましたとさ。
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