むかしむかし
あるところに、『さくらたろう』というこどもがいました。さくらたろうはつりがだいすきで、まいにち、うみへおさかなをつりに出かけていました。
さくらたろうはまだ体が小さいので、小さなおさかなしかつれません。ちなみに、さくらたろうがつりばにやってくると、お兄ちゃんたちがたくさんあつまってきます。どうやら、さくらたろうは大きなおさかなはつれませんがろりこん――もとい、大きなおともだちをつるのはとくいだったようです。
ある日、
さくらたろうはいつものようにうみへ、おさかなをつりに行きました。ざんねんながらおさかなはつれませんでしたが、いっしょにつりをしていた、なかよしのクマさんから、つかまえたさけ(おさかなのほう)をわけてもらうことができました。クマだったらかわでつかまえてなよ、とかいうのはやめましょう。はなしのじじょうというものがあるのです。
「さけさん、ゲットなの!これできょうはおいしいなべがたべられるね、うーれしうれし♪」
さくらたろうは、うきうききぶんでおうちにかえろうとしました。するととちゅうで、メガネをかけたカメを見つけました。
「ふええ――どうしましょう――」
「どうしたの、カメさん?」
「じつは、うみのそこにあるりゅうぐうじょうのホタひめさまから、さけ(おさかなのほう)のおつかいをおねがいされていたんですけど――まちがえて、おさけ(こどもはのんじゃいけないほう)をかっちゃったんです――」
「カメさん、かわいそうなの――そうだ、さけさんだったら、さくらもってるの!カメさん、これをもってかえってください。」
やさしいさくらたろうは、さけ(しつこいけどおさかなのほう)をあげることにしました。
「えっ、いいんですか!?ありがとうございます、ありがとうございます!でしたら、こちらのおさけとこうかん――するのはいろいろとまずいですね――そうだ、よかったら、いっしょにりゅうぐうじょうにきてくれませんか?せいいっぱいの、おもてなしをさせてください。」
「りゅうぐうじょう――いってみたいけど、さくら、あんまりおよげないの。みずのなかじゃ、いきもできないし、おめめもあけられないし――くらいの、こ、わーいの――」
「しんぱいありませんよ、そのあたりはぜんぶマホウのちからでどうにかなっているそうです。さあ、こさかめのせなかにのってください。」
カメはそういって、せなかを出しました。どうやら、こさかめというのはカメさんのなまえのようです。さくらたろうは、おそるおそる、こさかめのせなかにのりました。
「それでは、しゅっぱつしますね――」
こさかめはさくらたろうをのせて、ゆっくりと、うみの中へと入っていきました。
「だいじょうぶですか、さくらたろうさん?」
「――ほんとだ、くるしくないの!――そういえば、こさかめさんはメガネかけたままで、だいじょうぶなんですか?」
「――あっ、いわれてみたらそうですね。これもマホウのちからのおかげでしょうか。」
「マホウ、す、ごーいの!」
「えっへん!ユウナのマホウはせかいいちー☆」
「こさかめさん、なにかいった?」
「いいえ、こさかめはなにも――」
そんなかいわをしながら、ふたり?はうみのそこへとしずんでいきます。そしてだんだんと、りゅうぐうじょうのようなものがみえてきました。ぎゃくさんかくけいのかたちをした、ふしぎなたてものです。
「さあ、りゅうぐうじょうにつきましたよ。」
「このおしろ、どこかでみたようなきがするの――」
「きっと、きのせいですよ。」
こさかめはさくらたろうをせなかからおろし、
「すこし、まっててくださいね。」
といって、りゅうぐうじょうに入っていきました。しばらくすると、こさかめはまた出てきて、
「さあ、こちらへどうぞ。」
と、さくらたろうをおしろのなかにあんないしました。
なかでは、カエルやペンギン、たい――と思っていたら、たいやきなどが、ぷかぷかとおよいでいます。
「そうぞうしていたのと、ちょっとちがったの――」
「あちらのたいやきさんは、みせのおじさんとケンカしちゃって、ここにきたそうです。」
そうこうしているうちに、おおきなおへやにつきました。なかには、いかにもおひめさまっぽいふくをきた、おんなのこがいました。
「そうです、わたしがホタひめなのです。さくらたろうさん、こさかめちゃんをたすけてくれて、ほんとうにありがとうございます――せいいっぱいのおもてなしをしますから、ゆっくりしていってくださいね。」
「う、わーい!」
「それでは、コミ――もとい、おもてなし、かいしです!」
こうして、さくらたろうとりゅうぐうじょうのみんなによる、うたげがはじまりました。
「さあさあ、さくらたろうさん、おいしいたいやきですよ、どうぞ。」
「ありがとう、こさかめさん――そういえば、さっきのたいやきさんはどこにいったの?」
「ちょうりばにいましたよ。きっと、さくらたろうさんのためにいっぱいりょうりをつくっているんですよ。」
「そっか――たのしみなの!」
「さくらたろうさん、ホタひめといっしょにこのぶどうじるをのみましょうよ――ひっく。」
「ホタひめさま!それはぶどうじるじゃなくて――」
またホタひめさましゅさいのコスプレ――かそうたいかいがひらかれたり、みんなでうんどうかいをしたりもして、ゆめのような三日かんとなりました。
「りゅうぐうじょうは、とってもたのしいところなの!でも――そろそろ、おうちにかえらないと。きっとみんなが、しんぱいしてるの。」
ホタひめさまたちと、たのしいじかんをすごしていたさくらたろうでしたが、だんだんふるさとがなつかしくなってきました。なので、りくじょうにもどることにしました。
「そうですか――もっとここにいてほしかったのですが、しかたありませんね。ああ、せめてさいごにホタてづくりの『猪口吉咖喱(チョコカツカレー)』をごちそうして――」
「よくわからないけど、えんりょしておいたほうがいいよかんがするの――ホタひめさま、どうもおせわになりました!」
「そうだ、おみやげにこのたまてばこをもちかえってくださいませ――でも、ぜったいにあけちゃダメですよ?あけちゃダメですよ?うふふ、いちどいってみたかったんです、このセリフ♪それじゃこさかめちゃん、さくらたろうさんをおくってあげてくださいね。」
「はい、わかりました。」
こうしてさくらたろうは、ふたたびこさかめにのって、
りゅうぐうじょうをあとにしました。そしてしばらくすると、はじめにさくらたろうとこさかめがであった、あのばしょにつきました。
「こさかめさんも、ほんとうにありがとうございました――ばいばーい、なの!」
「いえいえ、こちらこそ――また、いつでもあそびにきてくださいね。」
そういって、こさかめはうみのなかへとかえっていきました。
「――こさかめさんにあえないと、さくら、りゅうぐうじょうにはいけないの。」
そんなことをおもいながら、さくらたろうはおうちへとかえろうとしました――が、ふとなにかがおかしいことにきづきました。とおりすぎるひとたちが、しらないひとばかりなのです。
「?」
よくよくみてみると、ふくそうも、ぜんいんみなれないものです。そしてむこうも、さくらたろうのことをふしぎそうに、じろじろとみていきます。
「あのこ、どうしてあんなかっこうしてるのかな?」
「おゆうぎかいの、かえりかなにかじゃないの。」
「???みんな、へんてこなかっこうしてるの――ふふふ、おかしいの。」
さくらたろうは、そんなまわりのしせんをきにせずに、おうちにかえろうとしました――が、
「あれ――けしきもかわってるの。ここ、どこ――?」
ひとびとだけでなく、ふうけいもすっかりかわってしまっていたのです。みちも、たてものも、すべてがおしろのようにがんじょうになっているではありませんか。さくらたろうはあっちこっちあるきまわってみましたが、おうちはみつかりません。しかたがないので、ちかくのひとにきいてみることにしました。
「あの――さくらのおうちをしりませんか?」
「さあ――まいごだったら、こうばんできいたほうがいいよ。」
「こうばん?」
「ほら、あそこにおまわりさんのくまわりさんがいるよ。」
さくらたろうは、こうばんというところにきました。
「あの――さくらのおうちをしりませんか?」
「まいごかい――めずらしいかっこうをしているクマねえ。みょうじは?おうちのでんわばんごうとか、わかるクマ?」
「?」
とりあえず、おまわりさんはまいごとどけをかくにんしてみました――が、それらしいこどもはみつかりませんでした。
「うーん、くまった――もとい、こまったクマ。」
「さくら、おうちにかえれないの――?う、う、う――うわあああああん!!」
とうとう、さくらたろうは泣きだしてしまいました。
「うわあ、ほんかくてきにこまったクマ!いったい、どうすれば――おや、そのはこはなんだクマ?」
「ぐすん――これは、ホタひめさまからもらった、たまてばこなの。でも、ぜったいにあけちゃダメだっていってたの。」
「そっか、でもひじょうじたいだから、あけちゃうクマ――おや、ふくがはいってるクマ?なまえもかいてある――ああ、あのいえのさくらちゃんかクマ!」
「???」
「よし、それじゃあこのくまわりさんがおうちまでつれていってあげるクマ――っておや、ほたるちゃんとこさめちゃんじゃないか!ちょうどよかった、きみたちのいもうとちゃんがここにいるんだクマ!」
「「えっ――あれ、さくらちゃん!?どうしたの、こんなところで?」」
「?????ホタひめさまにこさかめさん、どうしてここに?」
「――ホタひめ?こさかめ?それに、そのかっこう――ホタ、そんないしょう、つくったことないんだけどな?」「とにかく、いっしょにおうちにかえりましょ、さくらちゃん。」
「ぶじみつかって、よかったんだクマ!」
こうしてさくらたろうは、ホタひめ&こさかめとよくにたひとにつれられていきました。そしてついたところは、やはりしらないばしょでしたが、
「なんとなく――とーってもなつかしいかんじがするの!」
「ウフフ、おかしなさくらちゃん。そうだ、こんばんはひさしぶりにチョコカツカレーにしましょうっと♪」
「やっぱり、いやなよかんがするの――」
そんなこんなで、いつのまにかこのあたらしいいえにもなじんださくらたろうは、いご『さくら』として、しあわせにくらしましたとさ――
「そういえばホタひめさま、どうしてさくらたろうさんにあのはこをあけたらダメなんていったんですか?」
「えっ?このまえみたテレビで、そういうのがおやくそくなんだって――」
「――っていう、ゆめを見たの。」
「さくら――それが、このおねしょのいいわけなのかしら?」
「床につくまえに、うらしまたろうのはなしをしたのがまずかったかのう――しっぱいじゃ。」
「このまえも、ももたろうときんたろうのゆめを見たって言ってたし――さくらってば、なにかむかしばなしにえんがあるのかしら。」
「とりあえず、まずはあとしまつなのじゃ――」
「うわああああああああああん!!」
おしまい、おしまい?
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