そしてさくらたろうたちは、広いうみべにつきました。そこには、ちょうどふねが一そうつないであったので、さっそく、そのふねにのりこむことにしました。
「わんわーん!(あさひ、かじとりしたーい!)」
そう言って、あさひわんは舵(かじ)にすわりました。
「じゃあ、そらはこぎこぎする!」
そう言って、そらるはふねをこぎだしました。
「にじこは、おそらをみはりまーす!」
そう言って、きじこはふねの先にたちました。
おてんきはとてもうららかで、まっさおなうみの上には、なみ一つたっていませんでした。さくらたろうたちがおしゃべりをしながらすすんでいると、まえをながめていたきじこが
「おーおーおー、おにがしまはーっけん♪」
とさけびながら、パタパタとそらにとびあがっていきました。
さくらたろうたちも、きじこのとんでいったほうこうを見てみると、たしかに、とおいうみのむこうに、ぼんやりと雲(くも)のようなうすいものが見えていました。そしてふねがすすむにしたがって、それはだんだんはっきりと、しまのかたちになって、あらわれてきました。
「わあ、みえたみえた、おにがしまがみえたの!」
さくらたろうがそう言うと、あさひわんとそらるもいっしょにワーイワーイとよろこびのこえをあげました。
そうして、さくらたろうたちはついにおにがしまについたのでした。
さくらたろうは、あさひわんとそらるをしたがえて、ふねからゆっくりとしまにあがりました。
「わんわん、わん?(あれ、だれもいないよ?おかしいな?)」
「おにさん、おるすなのかな、こまったねえ。」
みんながくびをかしげながら、しばらくあるいていると、先にしまへとんでいったきじこがもどってきていました。
「さくらたろうちゃん、あっちにおうちがありましたよ♪きっと、おにさんはあそこでーす!」
いよいよ、おにとのたいけつ――さくらたろうたちに、きんちょうがはしってきました。
「おかし――みんなのために、おにさんをやっつけるの!」
しばらくたって、ついにいをけっしたさくらたろうは、おにがいるとおもわれるいえにむかって、おもいっきりはしりだしました。あさひわん・そらる・きじこの三びきも、そのちかくにぴったりとついていきました。
「とん、とん――おにさん、いますか?」
もくてきちについたさくらたろうは、まずノックをして、おにがいるかどうかかくにんしました。すると
「はーい。」
と、はんのうがありました。
「わーん、わん!(おー、ついにおにのとうじょうか!)」
「そら、みんなやっつけちゃうよ!くししし♪」
「にじちゃん、かわいいから、おにさんにこくはくされちゃったらどうしよう――」
どうぶつたちも、さらにきんちょうかんがたかまってきました。
パタパタとおとを立てたあと、戸があきました。そして、中から出てきたのは――
「あら、かわいいおきゃくさまですね♪こんなところに、何のごようですか?」
あらわれたのは、そうぞうしていたものとはにてもにつかない、とてもかれんな少女でした。しかし、たしかにあたまからはツノが生えており、ふくそうも、おにがしているようなとらのけがわをみにまとっていました。
「あの――おにさんですか?」
「はい、なまえは『綿雪(わたゆき)』です。ユ鬼(き)って呼んでね♪」
さくらたろうがたずねると、ユ鬼はえがおでこたえました。
「わん?(ひとりですんでるの?)」
「ううん、お兄ちゃんといっしょにすんでるの。今はおでかけしてるから、ユ鬼がおるすばんなの!」
あさひわんがたずねると、ユ鬼はふたたびえがおでこたえました。
「ゆきのおにいちゃん、やっぱりおにさん?」
「うん、とってもやさしくて、かっこいいの!このまえも、ユ鬼へのおみやげにって、いっぱいおかしをもってかえってきてくれたの!」
そらるがたずねると、ユ鬼はやはりえがおでこたえました。
「ところでユきお姉ちゃん、みんなのおかしをとっちゃった、わ、るーいおにさんのこと、しってまーすか?」
「まあ、そんなわるいおにがいるの?……おかし?」
きじこがたずねると、いままでずっとえがおだったユ鬼のひょうじょうが、いっぺんしました。そのときでした――
「ただいまじかる~☆ユキー、かえってきたよ!きょうも、おかしいっぱいもってかえってきたからね♪」
ユ鬼の兄、『鬼(おに)いちゃん』がかえってきました。
「おかえりなさい、お兄ちゃん♪ところでユキ、お兄ちゃんにききたいことがあるんだけど――」
「なんだいユキ、あらたまって。」
「そのおかし、どうやっててにいれたんですか?」
「ギクッ――そ、それはもちろんアレだよ、やさしいにんげんからもらったんだよ。」
「ふうん、そうなんだ。……こんなふうにして?」
そう言うと、ユ鬼は鬼いちゃんにゆっくりとちかづいていきました。なお、このあとにおこったできごとについてはどうしても猟奇的(りょうきてき)なひょうげんがふくまれてしまうため、しょうりゃくさせていただきます。
「やっぱり、ユキおねえちゃんもおにさんなの――」
という、さくらたろうのしょうげんからおさっしください。
「ほんとうに、すみませんでした――」
そう言いながら、鬼いちゃんはどげざしました。
「お兄ちゃんもはんせいしてるとおもうので、ゆるしてあげてください。」
そう言いながら、ユ鬼もふかぶかとあたまを下げました。
「「「「……はい(わん)。」」」」
さっきまでのできごとを見て、ユ鬼にはさからわない方がいいとはんだんしたさくらたろうたちは、鬼いちゃんをゆるしてあげることにしました。
「ありがとう!……ところできみたち、とってもかわいいね!そうだ、もうじかんもおそいことだし、きょうはうちにとまったらどうだい?」
「そうですね、ちょうどおへやもあいてますし――それとお兄ちゃんはあとでまた、おしおきべやにきてくださいね♪」
「「「「……」」」」
そんなかんじで、さくらたろうたちがおとまりのじゅんびをしていると、コンコン、と戸をたたくおとがしました。
「しつれい、ここはおにがしまであってるかしらー?」
「爺じゃ、おにのほんきょちかもしれぬというのに、よゆうよのう――」
「そういう観月こそ、ずいぶんとれいせいじゃないの。」
「わらわにはキュウビがついておるからのう、のうキュウビや♪」
「コンッ!」
「あっ、パパとママのこえなの!」
「まあ、さくらたろうちゃんのパパとママですか?いったい、どうしたのでしょうか。」
ユ鬼は、おじいさんとおばあさんをいえの中にまねきいれました。
「まあ、さくらたろう!ぶじだったのね、よかったわ。」
「よく、こんなところまでこれたのう――かんげきじゃ!」
「パパ!ママ!さくら、がんばったの!あーちゃんと、そらちゃんと、にじちゃんといっしょにここまで来たの!」
おじいさんとおばあさんは、ここまでがんばってきたさくらたろうを、おもいきりだきしめてあげました。
「わん、わん――(うう、なかせてくれるじゃねえか――)」
「そら、かんどうした!」
「よかったね、さくらちゃん!」
おとものどうぶつたちも、とってもうれしそうです。
「パパさんとママさんも、ぜひ、とまっていってください♪」
「あらわるいわね、それじゃあおことばにあまえちゃおうかしら。」
「よいおにも、いるものじゃのう――かんしゃじゃ!」
こうして、おじいさんとおばあさんもユ鬼のいえにとまることになりました。それとどうじに、みんなのねどこのしたくをしていた鬼いちゃんがもどってきました。
「みんなー、おふとんのよういができましたよー!ってアレ、ふえてる――しかも、これまたチョーかわいい!!」
ちなみに、おじいさんとおばあさんの見た目は、げんだいのようちえんじのようなかんじで、さくらたろうといっしょにいると、きょうだいにまちがえられるこ とがほとんどでした。そしてこのあと、鬼いちゃんは「Cコースって最高(さいこう)だな」とさけんで、またおしおきべやにつれていかれたとか――
とにもかくにも、こうしてさくらたろうはたくさんのおともだちとなかよくなり、おじいさんおばあさんといっしょにしあわせにくらしましたとさ。
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