三人のトゥルー姉妹
むかしむかしあるところに、二十人の子どもを産んだママがいました。しかしママは子どもたちを育てていくことができなかったので、みんなの将来のことを考えて、外に出すことにしたのでした。
十一番目に出ていった子どもは『夕凪』という、自分のことをマホウ使いの子孫だと思っている女の子でした。これからどうしようか考えながら歩いていると、夕凪はワラの束を持った女の人に出会いました。
「そうだ、あれでお家造っちゃおうっと☆」
夕凪は女の人に声をかけました。
「そこのお姉さん、家を建てたいから、夕凪にそのワラ分けてください!」
「むむむ、これは孔明様が火計で使うための大事なワラなんだけど――そういう事情なら、少しだったらいいよ。」
白いシニヨンをつけたその女の人は、夕凪にワラをあげました。そして夕凪はそのワラで家を造り、そこに住むことにしました。
ある日、夕凪の家に男の人がやってきました。その人は夕凪の兄で、ママが産んだ唯一の男の子でした。
お兄ちゃんはドアをノックしました。
「夕凪、お兄ちゃんだよー。中に入れてくれないかな。」
それを聞いて、夕凪はこう答えました。
「わーい、お兄ちゃんだ!あっ、でもちょっとだけ待ってね?今、マホウかけてるところなんだ☆」
「お兄ちゃん、焦らしプレイも嫌いじゃないけど――今日はそういう気分じゃないんだよね。」
そう言うと、お兄ちゃんは大きく息を吸い、夕凪のワラの家を吹き飛ばしてしまいました。そして夕凪を食べたのでした。
八番目に出ていった子どもは『小雨』という、メガネをかけた女の子でした。小雨は木材を持った女の人に出会いました。
「そうだわ、あれでお家を造りましょう。」
小雨は女の人に声をかけました。
「あ、あの、ごめんなさい――お家を建てたいので、その木材を分けていただけませんか――」
「うーん、これは作業員さんが線路の枕木を補修するための大事な木材なんだけど――そういう事情なら、少しだったらいいわよ。」
黒いロングヘアーのその女の人は、小雨に木材をあげました。そして小雨はその木材で家を造り、そこに住むことにしました。
ある日、小雨の家にお兄ちゃんがやってきました。お兄ちゃんはドアをノックしました。
「小雨、お兄ちゃんだよー。中に入れてくれないかな。」
「えっ、お兄ちゃんですか?ごめんなさい、少しだけ待ってください、今、お風呂に入ってるところなんです――」
「何、お風呂だって!ちょうどいいタイミングじゃないか!!」
そう言うと、お兄ちゃんは大きく息を吸い、小雨の木の家を吹き飛ばしてしまいました。さらにお風呂の水も吸いこんで、その後小雨を食べたのでした。
三番目に出ていった子どもは『春風』という、幸せなお嫁さんになることを夢見ている女の子でした。春風はレンガを持った女の人に出会いました。
「そうだわ、あれでお家を造りましょう――きゅん」
春風は女の人に声をかけました。
「すみません、お家を建てたいのでそのレンガを分けていただけませんか?」
「ああ、これか――実は羊羹と間違えて買ってしまったものでな、欲しいのなら全部やろう。」
黒いショートヘアーのその女の人は、春風にレンガをあげました。そして春風はそのレンガで家を造り、そこに住むことにしました。
ある日、春風の家にお兄ちゃんがやってきました。ちなみに表札には何故か『蛍』と書かれていました。お兄ちゃんはドアをノックしました。
「ホタ、お兄ちゃんだよー。中に入れてくれないかな。」
「やっといらしてくださいましたね、王子さ――お、お兄ちゃん!さあ、早く春――蛍の中に入ってきてください!!」
「おやそうかい、だったら遠慮なく入らせてもらうよ――げえっ、春風!」
「お待ちしておりました、王子様――きゅうううううん」
「帰る帰る、やっぱり帰る!!」
そう言うと、お兄ちゃんは大きく息を吸い、吹きました――しかし、何度吹いても春風のレンガの家はビクともしませんでした。お兄ちゃんはすっかり息を切らせてしまいました。
「まあ、王子様ったらそんなにハアハア言って――興奮してるんですね、大丈夫、春風も同じです――きゅううううううううううん」
「違うんだ春風、聞いてくれ――」
こうして、お兄ちゃんは食べられたのでした。
そしてその傍らには、全身ツヤツヤした春風がいましたとさ。
おわり
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